潜水設備

混合ガス潜水技術

ROV イメージ
ROV、混合ガス潜水、その先へ…日本サルヴェージの大深度への挑戦。

混合ガス潜水とは

潜水時の呼吸ガスが空気(窒素79%+酸素21%)ではなく、ヘリウムを主体とした酸素との混合ガスを使用する潜水で、深い潜水作業で使用されます。

なぜ混合ガスを使うのか

潜水深度が深くなるにつれ水中環境圧力が増大するので呼吸ガスの圧力も増大し、空気潜水では空気成分の約8割を占める窒素の圧力も増大します。
呼吸ガス中の窒素の圧力が一定以上になると、窒素は麻酔作用を引き起こします。窒素の麻酔作用は「窒素酔い」と呼ばれ、思考力低下や高揚感、陶酔感を誘発し溺水の恐れが生じます。そのため

深い潜水では圧力が増大しても身体に影響を及ぼさないヘリウムを主体とした酸素との混合ガスを使用します。
この技術は30年以上前から実用化されており、世界的に運用されています。

ヘリウムと酸素の混合ガスはヘリオックスと呼ばれ、潜水深度に応じて異なったヘリウムと酸素の混合比の混合ガスを使用します。そのため混合ガス潜水では空気潜水とは異なった潜水設備・装備・技術が必要となります。

弊社における混合ガス潜水技術の導入

弊社では平成25年末までに短時間混合ガス潜水に必要な機材・設備・装備を調達し、教育訓練を経て、平成26年4月から運用を開始しました。

弊社が目指す混合ガス潜水の潜水深度

混合ガス潜水には潜水時間が短い短時間潜水(「バウンス潜水」と呼ばれます。)と、数日から数週間に及ぶ長時間潜水(「飽和潜水」と呼ばれます。)があります。弊社では経済性や効率性、潜水士の身体的負担などを考慮して、バウンス潜水は深度100m、飽和潜水は300mを目標としています。

弊社における混合ガス潜水機材を使用した作業実績

混合ガス潜水で使用する弊社の主要設備・機材

ガスコントロールパネル 写真
ガスコントロールパネル(潜水管制盤)
潜水指揮者はこのコンテナ式潜水管制盤で、作業をモニターしながら潜水深度・時間、呼吸ガスなどを管制します。
潜水士は音声通信による潜水指揮者の指示に従って作業を行います。
潜水士昇降装置(LARS)
潜水士はこの水中エレベーターに乗り込んで海中の作業現場に向かい、浮上時の減圧はこの中で行うので、潜水士の身体負担が減少します。
潜水士昇降装置(LARS) 写真
潜水士個人装備
潜水士は送気式バンドマスク潜水器を装着し、潜水器にはモニタ用カメラとライト及び通信装置が取付けられています。
潜水士個人装備 写真
潜水用呼吸ガス
潜水士が潜水作業中に呼吸するヘリウム酸素混合ガス(右)と酸素減圧時に呼吸する酸素(左)は高圧ボンベから送気されます。この他に圧縮空気も使用します。
潜水用呼吸ガス 写真
再圧タンク
潜水士の減圧のための水中拘束時間を少なくするため、有事の際には船上に設置した再圧タンクで酸素を呼吸しながらゆっくりと減圧します。また、減圧症が発症した場合に備えて、もう一つ同じような再圧タンクを併設しています。
再圧タンク 写真

飽和潜水

混合ガス潜水技術を用いた深々度潜水作業の分野に取組んでおり、皆様方からのあらゆるニーズに応えられるようハードソフトともに充実した環境づくりを目指しております。
弊社が導入する我が国唯一の最新式飽和潜水装置は
  1. 1.可搬式のため場所さえあれば様々な作業船の甲板上に艤装できます。
  2. 2.3名の潜水士が1チームとなり、2チームが入ります。
  3. 3.混合ガス潜水にも運用できます。
非常用呼吸装置
潜水作業中にSDCアンビリカルからの呼吸ガス供給が中断した場合に備えて、潜水士は半閉鎖循環式の非常用呼吸装置を装着します。
非常用呼吸装置 イメージ
呼吸ガス回収再生装置
潜水士が潜水作業中に呼吸するガスは船上からSDCアンビリカルを介して送気されます。潜水士の呼気はSDCアンビリカルを介して呼吸ガス回収再生装置に送気され、ここで炭酸ガスや水分を除去して再生された呼吸ガスは再び潜水士に供給されます。この方法により呼吸ガス(ヘリウム酸素混合ガス)の消費が抑制され、洋上での長期に及ぶ潜水作業が可能です。
避難用高圧チャンバー(HRC)
船上火災などの非常時に、潜水士は生命維持装置が装備された避難用高圧チャンバー(HRC)に移乗し、HRCは海面に降下離脱します。

飽和潜水とは

潜水作業では、潜水士が呼吸するガスの圧力も潜水深度に比例して増大するので、潜水中は呼吸ガスの大部分を占める不活性ガスが潜水士の身体内に溶けこんでいきます。そして浮上するときは溶け込んだ不活性ガスが環境圧の減少に伴い身体内で気泡化して減圧症を引き起こさないように時間をかけてゆっくり浮上する必要があります。そのため潜水深度が深くなるほど、潜水時間が長くなるほど浮上時間も長くなります。

しかしながら、呼吸ガス中の不活性ガスがこれ以上溶け込まない状態(飽和状態)にまで長くその水深にいると、その後はどれだけ長く水中(高圧環境)に滞在しようと、溶け込んでいる不活性ガスの量は変わらないので、減圧時間も変わりません。
この原理を応用して深い深度に長時間潜る潜水技術を「飽和潜水」と呼びます。

飽和潜水の特徴

飽和潜水中は、潜水士は水中と同じ高圧環境の高圧居住チャンバー(DDC)内で居住し、必要に応じて高圧環境圧に保圧した水中エレベータ(SDC)で海中に降りて潜水作業を行います。
飽和潜水には以下の長所と短所があります。

長所
  • 潜水作業時間に制限がなく、水深40m~300mの範囲で潜水作業が安全に繰り返しできます。そのため作業完遂までの期間が短縮されます。
  • 加圧と減圧が1回で済むので、減圧症リスクが低減されます。
  • 海象気象が急変した時でも、潜水士を速やかに退避させることができます。
短所
  • 潜水装置及び支援設備が大掛かりで、多数の支援要員が必要となり、また呼吸ガスもヘリウムが主体となるので運用経費がかかります。
  • 飽和潜水中は潜水士は狭い高圧居住チャンバー(DDC)内に滞在しなければなりません。
  • 減圧は飽和深度からの1回で済みますが、減圧時間は長くなります。